民活による高速インター建設

滋賀県のSさんより

今から10年以上も前のことですが、京都と大阪の間にある長岡京市にあるエレクトロニクス企業に仕事で行った時のことです。同市の国道171号線沿いには、日本のシリコンバレーともいえるほどにその後も多くのハイテク企業が成長と集積を続けています。

そこへ行くには名神高速道路の京都南インターで下りていくしかないのですが、長岡京市との間に横たわる桂川がネックとなって、インターチェンジと国道171号線を結ぶ地方道路は常にひどい渋滞になるのです。そのため周辺の生活道路まで産業関連の車が入り込んで大変な状況となっていました。この状況は今でも緩和されていません。

訪れた企業の方に、「長岡京市の目の前を名神高速が通っているわけですから、周辺の企業が資金を出し合ってでも新しくインターを作ったらどうですか。企業の生産性や効率もあがり住民の環境問題も解決できトータルとしてみんなの得になるのではないですか」と提案してみました。相手からはこちらの予想通り「良いお考えですね」という通り一遍の返事が返ってきただけで、言外に、そんなことをおっしゃってもこの日本では無理ですよと言わんばかりの雰囲気でした。

アメリカでは、ターンパイクって西部開拓時代に自分の土地に道路を作って、そこに遮断機をつけて通行料を取っていたのが起源なんですね。日本でもインター取り付けなどへの民間資金の活用の際は税制で優遇するとか、工夫する余地があるのではないですかね。


(以下は、七尾からのコメント)

ご指摘の通りだと思います。せっかくの良いご提案なのに、人がまじめに取り合わないところに、今の日本の問題の核心があるようです。「なせばなる(アメリカ流に申せばCan doの精神)」ということは日本でも昔から言われてきていることですから、お互いにあきらめないでがんばりましょう。

私が今滞在しているコロラドスプリングズ市とデンバーの間には、州間高速25号線があります。そこを走っていますと、なかなかしゃれたデザインの橋が架かっており高速への新しい出入り口がほぼ工事を終えているところがあります。土地の人に聞いてみたところ、何とその取り付け口は、周辺に最近できた大ショッピングセンターに出店している一群の企業の共同負担という民活で出来上がったということなのです。

もちろんインターを作るにあたっては市議会で審議され、最終的には住民投票で市民の意見も確かめるなどの民主的な手続もとられました。民間資金で造られた新しいインターは周辺の住民にも無料で利用されます。工事が完成した段階で所有権は州に無償で移転され、その後の維持管理は州の道路局の仕事となるという次第です。

日本でも、政府や地方公共団体の予算がこれからは伸びない時代が続くでしょうから、このようなダイナミックな民活の発想が必要になるでしょうね。ご指摘のようにアメリカでは、西部開拓時代にはロッキー山脈を越える大事な峠道の多くは民間人により整備され、通行料を取ったとの歴史があります。遠いワシントンの連邦政府がやってくれるのを待っていられなかったからです。そういえば箱根のターンパイクはある私鉄企業が造った観光用の有料道路ですよね。日本でも、やろうと思えばできるということだと思います。(1999年8月31日 記)


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