米国での市民意識のルネッサンス(再活性化)

米国ワシントンD. C.に長くお住いの方から、ワシントンポスト2月21日(日)号が送られてきました。米国での市民意識の再活性化の動きやボランティア活動の最近の高まりに焦点を当てたJohn W. Fountain氏の力作レポートです。

その一部を紹介することにより、われわれ日本人が考え行動していく際の参考になればと思います。

1999.5.25 七尾

1. 大きな政府への失望

米国では市民意識の再蘇生の必要が、叫ばれはじめてすでに約20年になります。その引き金になったのは、ベトナム反戦、麻薬、犯罪、経済混乱などで社会が昏迷した70年代後半です。

F氏によれば、ボランティア運動の再生、すなわちルネッサンスの必要を、政治家として最初に打ち出したのはカーター大統領(Jimmy Carter, 1976-80)だったとしています。その後、レーガン大統領により、小さな政府、規制撤廃、ぬくもりのある人間関係復活の必要が、強力に推し進められ、ブッシュ、クリントンと引き継がれてきています。

大きな政府による連邦規模での社会問題などの解決を夢見た60年代の米国民が、70年代の政府の肥大化と官僚的非能率の蔓延に失望し、市民の社会参加により身近な問題から解決していこうとの動きです。

この様な動きは米国のみに限りません。ヨーロッパでも、北欧型の「大きい政府」による社会福祉重視はすたれました。日本では、中曽根政権が、行政改革、規制緩和という形で着手したといえます。ただ、その後のバブルとその後始末の失敗で日本は米・欧州に大きく遅れてしまったといえます。

2. 17歳の少女のボランティア

F氏は、米国東海岸の港町、ボルチモアに住む17歳の女子高校生アンバー・コフマンさんが、お母さんの熱心な助けを受けて、毎日曜に市役所の前でホームレスの人たちに対してサンドイッチなどを配るボランティアを始めたことを取り上げています。

  

これに注目したメディアの報道もあって、アンバーさんのことは有名になり、協力を申し出る仲間や企業が相次いでいるというのです。ボランティアに関係する団体「インディペンデント・セクター」の推計によれば、つぎのとおりとのことです。

3. 政府や教育委員会や企業の協力

この様なボランティア精神のルネッサンスを後押ししようと、ブッシュ政権と時の連邦議会はThe National and Community Service Actを1990年に成立させ、クリントン政権は1993年に、全米で個人と企業によるボランティア運動を盛んにするための傘となる機関(AmeriCorpsとCorporation for National Service)を発足させるための法律に署名しました。

数百社におよぶ米企業も、その社員が勤務時間を使ってボランティア活動に参加することを認める旨声明しました。平均的に、米大企業は、税引き前の利益の1-1.2%位を社会貢献に毎年割り当てているようです。

F氏のレポートによれば、全米で多くの公立・私立の学校が、社会貢献活動を生徒の卒業の要件(例えば、在学中に少なくとも100時間)とするにいたっていること、1992年には、ボルチモアのあるメリーランド州の教育委員会は、全米に先駆けて、同州内の学校は社会貢献実績を生徒の卒業の要件とするべしとの決定を行なったとのことです。


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