1999.12.23 七尾記
米国の経済専門のテレビチャネルを見ていましたら、視聴者からの相談コーナーになんと11歳の少年から株式について質問の電話が入ってきたのです。
曰く「ぼくは11歳です。コンパック(米国の有名なコンピュータメーカー)の株を持っているのですが、短期長期の株価の見通しを教えて下さい」と.......
さらに驚いたのは、番組で応待した有力証券の分析マンが、相手が少年であることになんらおどろきを示すことなく、あたかも相手が大人であるかのように淡々と質問に答えているのです。多分クリスマスプレゼントとして親が子供に、コンピュータの代わりに、その会社の株を与えたのかもしれませんね。米国でも多くの子供たちはポケモンカードに熱中しているのですが、こういうチビッコ投資家もどんどん増えてきているのでしょう。
アメリカ人とゴルフをしていても、日本の株式ではどれに投資したら良いか教えてほしいなどと聞かれ、知らず知らずのうちに株価談議に誘いこまれていることもあります。クリスマスを前にして連日、パーティがあちこちの家でくりひろげられていますが、私が滞在しているここコロラドスプリングス市には引退したお金持も多く、パーティのそこかしこで2〜3人が集まっては生真面目な顔をして立ち話をしています。かれらの話のテーマは大抵のところ資産運用がらみとみてよいくらいです。
退職金積み立て分による株式投資による利益は非課税とするとの例の401K制度が毎年のごとく、強化改善されてきており、米国民による金融資産運用はますます刺激されてきています。老後を政府による社会保障に頼れないなら若いうちから自分で投資家として資金を運用して、老後のための資産を増やしておくほかないとの雰囲気がいやが上にも強まってきており、資本市場への個人資金の流入が止まらないのです。とりわけ株式市場は米国民のうち推計8千万人の参加でおおにぎわいの様相です。ある証券解説者は、日本の阿波踊りのうたい文句の「踊るアホウに踊らぬアホウ、同じアホなら踊らにゃ損、損」を上手に英語に訳して(Fools are dancing but the bigger fools are watching only)、このところの米国市場フィーバーの雰囲気をうまく表現していました。
事実、本日12月23日には、ハイテク・通信・インンターネット関連などの高成長株を中心に構成されるNASDAQという指数が、ついに4000の壁を突破しました。なんとこの株価指数は年初からみて80%も上げてきているのです。多くの人気株は、儲けがないにもかかわらず成長期待のみで買いが集まり、デイトレードなどの短期保有で売る人もいて日々激しい動きを示しています。専門の解説者たちも、伝統的な尺度ではとても説明できない株価水準だとお手上げの状態です。多くの専門家は来年1〜3月の間にはちょっとしたきっかけで、この指数が10〜25%下方への水準訂正を示す可能性が高く、場合によっては50%くらいの暴落が起きてもおかしくないと言い出し始めています。
米国の活気あるお金のマーケットが、米国や世界の経済社会にプラスの影響を及ぼしてきていることはだれも異論が無いことでしょうが、大衆参加のマス・マーケットが貪欲な群衆心理で動いていることもまた事実です。この群衆心理がある日突然、見えざる神の手によっていっせいに潮の流れを変えることは、これまた歴史が証明しています。米国の中央銀行である連邦準備制度(FRB)のグリーンスパン議長は、金利を主たる武器に米国株式市場の沈静化に立ち向かっていますが、市場が軟着陸に失敗すれば日本もふくめ世界中に大きな影響が及びます。
来年の干支は辰、株式市場が昇竜となってしまい天国へのホットラインとなりませんよう、ひとりひとりが用心して身を守るほか手が無いようです。