1999.10.8 七尾記
アンデルセンの童話で有名なデンマークのお話です。「みにくいあひるの子」のお話しは誰でも子供のころ読んだ記憶がありますよね。デンマークは湖水が散らばる美しい国ですが、その首都コペンハーゲンにお住いのある日本人の方から、最近お便りをいただきました。
お便りによるとコペンハーゲンのすぐ北に人口わずか2万のファーラム(Farum)という市があり、80年代中頃には市の財政は赤字で破産しかけていたのが徹底した民活により見事に立ち直り、いまや、デンマーク中で最も豊かな街に生まれ変わったというのです。私はさっそくインターネットで、ファーラム市のサイト(http://www.farum.dk/)を探し訪れてみました。みなさんもこのサイトをぜひ訪れて見てください。
サイトの写真によれば、やはり森に囲まれ湖畔を白鳥が静かに泳ぐ素敵なコミュニテイでした。このファーラム市の成功物語を視察するため、外国からだけでも最近では年間1万5千人もの関係者が訪れるようになったとのことです。また「明日へのまち」として世界から選ばれた10の都市の一つにも入っています。その裏にはこの10年間に、改革への勇気と、創意工夫と、市のリーダーや住民のたゆまぬ努力があったことは想像に難くありません。
先に述べました友人からの便りによれば、市長の給料はほんの名目的なもの、市会議員は無料奉仕、この10年で、市庁舎、学校、福祉施設、下水処理施設などの公的資産は基本的には全部、民間に売却した上で市が賃借し、企業との契約で民間に行政サービスを提供させているというのです。例えば市庁舎の掃除をしていたおばさん的な人も昔は皆公務員でしたが、今は一切民間に委ねて役務職員はなくしてしまい、そのサービスが悪ければ契約に基づき民間に責任を取らせるということです。
同市のサイトの説明によれば、市というものを一つの民間企業としてとらえ、市民は企業に投資する株主とみなすということです。企業たる市は株主たる市民に、最良のサービスを最低のコストで提供する(配当)ことに努めるという考えです。この10年間に赤字財政から立ち直ったのみならず毎年減税をおこない、税は21.8%(1984)から17.3%(1996)まで下がったとのことです。
行政サービスのコストと内容の充実もはかられました。デンマークは、湖水の水質管理など環境規制は大変きびしいことで知られていますが、水道局がやっていた下水処理も民間企業に委ねられ、立派に低コストでやっています。失業者には申請から48時間以内に委託業者から仕事を紹介させ、これでも働かない者には市からの生活補助を打ち切るということも導入しました。
同市のサイトの説明でひしひしと判ることは、新しいアイデアにこわがらずに挑戦することについて、市民の賛同を得ることはなかなか大変なことだったということです。これまでのやり方、古い考え方というものが必ずしも良いものだとは限らないということが繰り返し同サイトでは強調されています。
改革のリーダーシップをとった市長さんはデンマーク自由党の有力幹部ということです。リーダーと市民の両輪がどのようにしてうまく噛み合っていったのか、興味津々ですね。このあたりの事情はさらに勉強してご報告したいと思います。同市の湖水地域をサイクリングしながらめぐってみたり、市民と会って語りあってみたりしたいと思われませんか。同市のEメールアドレスは、farum@farum.dkです。